『21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由』読書レビュー 124冊目:ビジネスNo.83

『21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由』
著:佐宗邦威


こんにちは、読書好きのmasamariです。

今回は、佐宗邦威さんの『21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由』をご紹介します。


◾️21世紀型スキルとは?

アメリカでは、21世紀に生きる人材がグローバルに活躍するためのスキルを定義する研究が行われてきた。
2002年からはじまったこの研究は、 マイクロソフト、シスコシステムズ、アップル、オラクル、インテルなどの企業が教育省と協働して行ったものである。
2009年にはイギリス、フィンランド、シンガポールなどの教育先進国も足並みをそろえ、以下のような「21世紀型スキル」として整理されている。

・思考の方法 ー 創造力とイノベーション、クリティカル思考と問題解決、意思決定と学習
・仕事の方法 ー コミュニケーション、コラボレーション
・仕事の道具 ー ICT(情報通信技術)とデジタルリテラシー
・世界で暮らすための技能 一 市民性、生活と職業、個人的および社会的責任



この中で、創造力とイノベーションは、クリティカル思考と問題解決や意思決定とともに、大事な思考スキルとして取りあげられた。
こういった流れをうけ、ハーバードやMIT、ノースウエスタン大学などの老舗MBAプログラムにおいても、デザインスクールと組んだアントレプレナーシップ(起業家精神)や企画開発のプログラムが導入されはじめている。

スタンフォード大学が、あらゆる学部の生徒が協働してイノベーション課題に取り組むd.schoolを設立したことは、日本でも知られるようになってきた。
このようなビジネス教育とデザイン教育が交じり合うトレンドは、イギリス、ドイツ、北欧、イタリアなどのヨーロッパの老舗美大やMBAでも起こっている。
日本でビジネスパーソンが「MBAにチャレンジしてくるよ」というように、欧米において「デザインを学んでくるよ」という会話は、もはや普通のことになりつつあるのである。


◾️イノベーションを担う3つの輪の融合

この欧米のデザインスクールにおけるカリキュラムを理解する上で、基本的な考え方が、「イノベーションを担う3つの輪」だ。
「デザイン、ビジネス、エンジニアリングの3つの要素が協働することでイノベーションを生み出すことができる」というものである。
これは、デザインファームIDEOが提唱した、「イノベーションに不可欠な3つの要素がそろってはじめて新たな価値が創り出される」という考え方と符合している。



1 構想:人間にとって望ましい姿を構想する=デザインの役割
2 実現:再現性をもって実現することを可能にする=エンジニアリングの役割
3 商売:社会にとって影響力を広げていく商売の仕組みをつくる=ビジネスの役割

デザインスクールに通う学生の多様性も確保されている。
デザイン、エンジニアリング、ビジネスのそれぞれの分野で異なる得意分野を持つ学生を混ぜたうえで、これら3つの分野を融合したカリキュラムが意図的につくられている。
さらに少数精鋭のチームが協働することでイノベーションが生まれる、 という信念がある。

著者が通ったイリノイ工科大学デザインスクール(ID) でも、 デザイナーやエンジニア、マーケター、リサーチャーなどの背景の違うメンバーがともに学び、ともに働きながらイノベーションプロジェクトを進めていた。
デザイナーは戦略を学び、ビジネスマンやエンジニアはデザインを学ぶことで、差別化した価値をつくり出すために必要な、複数の思考スタイルができる「ハイブリッド人材」になっていくことができる。


◾️デザイナーから学ぶ知的生産性を高めるノウハウ

デザイン思考の1丁目1番地、それは「デザイナーの思考法」そのものである。
「デザイン思考のプロセスをなぞってもなかなか面白いアイデアが出ない」という人もいるが、論理的思考のままデザイン思考のプロセスだけなぞって失敗してしまうことが多い。

思考法というと、ロジカルシンキングやクリティカルシンキングなど左脳による論理思考が有名だが、IDに通うデザイナーが目指す思考スタイルは、左脳と右脳の両方を活用したハイブリッドな思考である。
それは、左脳の論理の力と、右脳のイメージの力を両方バランスよく使いながら、自分ならではのユニークな切り口を出すという、 創造=「知的生産」を日々実践することになる。

このハイブリッド思考を成り立たせている要素を、「インプットの質」「発想のジャンプ」「アウトプットの質」という3つの変数に分解してみる。
いずれも、限られた時間を有効に使いながらそれぞれの質を高めていくことで、知的生産性を大きく上げることができる。

また、新たな切り口をだすための思考を日々実践するためのヒントとして、著者がデザイナーの同級生たちとともに作業を進める中で学んだ、 デザイナーならではの右脳思考がある。
つまりこれが、デザイナーが日々自らに問いかけ、考えている質問である。



◾️おわりに

デザインと聞くと、ビジネスとは関係の無いように聞こえますが、イノベーションを起こす上では必要不可欠なスキルのようです。
デザイナーの常識とビジネスマンの常識を組み合わせた「ハイブリッド思考」を取り入れることで、視野が広がり今までの考え方では解決できなかった問題も、解決できるようになるかもしれません。
自分が思っている「非常識」も、他の業界では当たり前なこととして成功していることもあります。
一つの考え方に囚われないことが、成功への近道なのかもしれませんね。
壁にぶち当たっている人や、今までとは違うことをしてみたいと思っている方は、是非読んでみてください。

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