『MBA 問題解決100の基本』読書レビュー 118冊目:ビジネスNo.80

『MBA 問題解決100の基本』
著:グロービス


こんにちは、読書好きのmasamariです。

今回は、『MBA 問題解決100の基本』をご紹介します。


◾️真の見える化とは「目に飛び込んでくる化」だ

何か問題が起きているとき、その発見の助けとなるのが物事の「見える化」だ。
見える化によって発見される問題には、さまざまなものがある。
ビジネスにおける典型的なものとしては、生産ラインでの不具合や顧客の不満、その他ビジネスの品質上のトラブル、 あるいはそれに伴う財務数字(売上高や利益など)の悪化がある。

しばしば企業が陥ってしまうのは、売上高や利益といった財務数字(店舗当たりの数字などを含む)だけを見て、ようやく数ヶ月あるいは数週間前に起こった問題に気づくというパターンだ。
特定の店舗の売上高や利益の低下は、実際にサービス品質レベルや顧客満足度の低下が始まったからといって、すぐに起こるわけではない。
サービス品質の劣化は、市場に認知されるまでに時間がかかったりすることから、数字に反映されるにはタイムラグが発生するのである。
このようなやり方では、適切なアクションがスピーディにとれない。
初動でつぶしておけば大きな問題にならなかったものが、非常に広い範囲の火消しに追われてしまうということになってしまう。

これを避けるために必要なのが、現場レベルで早期に「好ましくないことの予兆」に気づくことである。
そのためには、先行指標となる数字や情報を異常が起こればすぐにわかるようにすべく「目に飛び込んでくる」ようにするのが効果的だ。
社員に公開してもいいKPIはタイムリーに共有するとともに、顧客の生の声なども共有すると良い。
たとえば顧客の声をチャットツールに流し共有するなどだ。

日本では伝統的に製造業の製造現場ではJIT方式(必要なものを必要なときに必要な量だけ生産するシステム)などを導入することと並行して、比較的早くこの「目に飛び込んでくる化」を実施してきた。
トラブルがあると赤信号がともり、そこでラインを止めるなどは非常にわかりやすい「目に飛び込んでくる化」であり、製造業であれば多くの企業で導入されている。

しかし、それ以外の部分、特にマネジメントに関する部分はまだまだという組織が少なくない。
数字と視覚を徹底的に活用して、問題を見つけやすくすることが大切である。

視覚の活用について言えば、グラフにして見せるのはやはり効果的だ。
重要なKPIなどは、時系列の変化を折れ線グラフや棒グラフにして誰もが見えるようにするだけで、「これは順調」「何かが変だな?」といったことが共有されやすくなる。



また、上から押し付けるのではなく、現場が考え、問題を「自分ゴト」と捉え、どんな見える化が必要かを考えると、効果はさらに増す。
これは現場に蓄積されている暗黙知(経験や勘に基づく知識)を形式知(言語や図示で説明できる知識)に変える効果をもたらす。

「見える化」の権威でもあるコンサルタントの遠藤功氏は、このような見える化を「管理の見える化」に比して「自律の見える化」と呼んで重視している。
「自分が問題解決の当事者だ」という意識がないと、見える化を進めてもその効果は小さいという点には意識を払いたいものである。

リーダーであれば、メンバーに当事者意識を植え付けるべく、 常日頃から質問を多用したコーチング的なコミュニケーションをすることが求められる。


◾️フレームワークで物事を見よ

物事の全体像を捉えたり、分析・立案する際にフレームワーク(枠組み)を用いると、問題解決を含め、物事を非常に処理しやすくなる。
グロービスを始め、多くの組織で言われる言葉だ。

ビジネスの1つの特徴に、形の明確な「モノ」とは異なり、ぼんやりしたものだという点がある。
たとえば「Aさんが考えた新ビジネスって結局どんなビジネスなの?」と聞かれても、瞬時に回答するのは意外と難しいものだ。
「こんな感じのサービスで、こういった人に受けると思います」という回答をする人もいるかもしれないが、それだけでは重要な点を漏らしてしまいかねない。
あるいは、「今度入社するBさんってどんな人?」といった質問もそうだ。
いろいろな特徴を語ることはできるだろうが、これも大事な点を伝え漏らしてしまうかもしれない。

そこで活躍するのがフレームワークである。
たとえば新ビジネスについて説明するのであれば、クレイトン・クリステンセン教授らが提唱したビジネスモデルの4要素、「提供価値」「利益方程式」「経営資源」「プロセス」で説明をすると、だいたいのポイントは伝わるはずだ。
そのアイデアが効果的かを再度分析する際にも、同じフレームワークが使える。

難しいと感じるようなら「誰に」「どのような価値を」「どのように提供し」「どのように儲けるのか」という観点で伝えたり分析してもいいだろう。
含まれる要素はほぼ同じであり、重要な点を漏らしていないということが重要である。
その上で要素間の整合度合いなどを確認してみる。
たとえばその事業が10代の若者をターゲットにしているにもかかわらず、それを伝えるメイン媒体がフェイスブックというのでは、あまり効果的ではなさそうだとすぐに想像できる。
「若者の利用が多いツイッターやLINE、インスタグラムの方が効果的ではないか?」という議論がしやすくなるのがフレームワークで物事を整理することの大きな効用である。

人物について説明するのであれば、「30代くらいの女性」といった基本的属性情報に加え、「スキル(それに伴う実績)」「モチベーション、 志」「人的ネットワーク」などで説明すると、その人がどんな仕事に向いているのか判断しやすくなるだろう。

フレームワークはビジネススクールで学ぶものだけでも数百に及ぶ。
こうしたフレームワークを的確に用いるのがフレームワーク思考である。
分析を始め問題解決を仕事とするコンサルタントや、経営大学院などの卒業生であれば当たり前に身につけている思考パターンだ。

一般に、永く用いられているフレームワークほど、時代の風雪に耐えた汎用性の高いものと言える。
いずれにせよ、「先人の知恵」が詰まった、囲碁や将棋に例えれば定石(定跡)に相当するものだ。
フレームワーク思考は、先人の知恵をうまく活用する思考方法とも言えるのである。

なお、先人の知恵を活用することも重要だが、場面場面に合わせて、自分なりに新しいフレームワークを(既存のフレームワークも参考にしながら)考えてみることも非常に有効だ。
たとえば良い夫婦かどうかを考えるならば、「愛情」「家計」「子育て」「人づきあい」の4つのフレームで考えるなどである。
慣れてきたらそちらの比重を上げていくと、オリジナリティの高い分析や示唆が導き出せるようになる。



◾️「より多くのこと」を「より速く」

この言葉を1つの指針にしているグーグルは、世界中の企業がお手本とするエクセレントカンパニーだ。
グーグルはさまざまな仕事術を開発してきたことでも有名だが、ここでは「より多くのこと」を「より速く」行う手法としてSPRINTを紹介する。
シリコンバレーの企業がベンチマークにしている手法でもある。
詳細は「SPRINT 最速仕事術』(ジェイク・ナップ他著、ダイヤモンド社)にて説明されているが、エッセンスを挙げると以下のようになる。


・7人以下の専門家の精鋭を集め、5日で結果を出す。そのための時間やスペースを確保する
・曜日ごとに何をするかが決まっている(ソリューションを決めるのが水曜日、プロトタイプを作るのは木曜日など)
・個々人がソリューションを考え、それを持ち寄ることで最も適したソリューションを考える



5日で仕事の成果なんて出ないと思う方も多いかもしれないが、「5日でやると決めて集中的に取り組めば結果はついてくる」というのが、グーグルが発見した事実だ。
SPRINTで特徴的なポイントの1つに、ソリューションは個々人が徹底的に考え、それを持ち寄るという点がある。
SPRINTは、グーグルの社員の特質や企業文化、クリアすべき課題の特性などがマッチしたからこそ機能したわけであり、あらゆる企業が簡単に真似できるわけではないかもしれない。
しかし、「役割分担も不明なままいつまでもダラダラ議論をしない」「日程を決めたら徹底的にそれに向けて皆が知恵を振り絞る」などは、ヒントになる部分も大きいのではないでしょうか。


◾️おわりに

問題解決に関する100の技法が紹介されています。
また、それぞれの技法の中では、キーワードも紹介されているので、そのキーワードについての学びも深めていけば、さらに知恵が増えていくのではないでしょうか。
問題解決について学びたいと思っている方は、是非読んでみてください。

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