『全社員生産性10倍計画』読書レビュー 122冊目:ビジネスNo.82

『全社員生産性10倍計画』
著:本間卓哉


こんにちは、読書好きのmasamariです。

今回は、本間卓哉さんの『全社員生産性10倍計画』をご紹介します。


◾️実は低い日本の生産性

厚生労働省が公表している労働経済白書は、日本の労働生産性が先進国の中で極めて低い状況にあり、IT投資や人的資本投資の強化が必要だと指摘している。
2016年のOECD(経済協力開発機構)加盟国における1人あたりの労働生産性を見ると、日本は7万4315ドルで、加盟国35カ国中の20位である。
GDPで世界3位の日本が生産性は20位。
1人あたりの生産性がいかに低いか、容易に想像がつく。



しかし、トヨタ自動車の「カイゼン」などに見られるように、日本の工場は効率化が追求されており、世界でも有数の生産性を誇る。
では、なぜこんなに日本の生産性が低いのか。
それは工場のような生産現場ではなく、サービスや、製造業の営業・間接部門などのホワイトカラーの生産性が、世界に比べて非常に低いせいなのである。
自分の会社のオフィスはどれだけ効率化に注力してるか?
製造業であれば工場と比較してみる。
時間やリソースを大切にする感覚に大きな差があるのではないか?

ITとサービスが発達・普及した現在では、ITを活用して仕事のログ(記録)を取ることが容易である。
メールなどの保存はもちろん、グループウェアの使用状況、誰がいつどこにいたかの把握、それらのログを解析して、誰がどれだけ効率的に仕事をしているかを割り出せる。
たくさんメールを書いている割に営業成績の上がらない人は、メールの使い方に改善余地があるかもしれない。
顧客への訪問回数は少ないのに次々に商談を成立させている人には成功の秘訣があり、それをヒアリングして他の社員に展開することで全体の力を高めることができる。

このように仕事のログを蓄積・解析することが可能となったことで、より的確に生産性を高めることができるようになったのである。
先ほど述べたように、日本の生産性は今、残念ながら世界でも極めて低い水準だ。
そしてその伸びしろは、ITを活用できる部分にこそあると著者は思っている。


◾️いらないものに時間を振り向けている体制を変える!

ITが決定的な違いを生み出す分野の1つ目は、「効率化(時間)」だ。
簡単にいうと、「IT活用によって今よりも時間がかからないようにする」という観点である。
時間を買うことはできないが、IT活用によって時間を生み出すことができるのだ。

そうは言うものの、「時間」というものは目に見えないため、どれだけ時間がかかっていて、どれだけムダがあるのか、どこに短縮余地があるのかわかりにくいものである。
そのため、まず時間を「見える化」するのが、効率化するための第一歩となる。

仕事で何にどれだけ時間をかけているかざっと書き出してみる。
たとえば、オフィスでパソコンに向かっている午前9時〜12時までの3時間に絞って考えてもかまわない。

メーラーやパワーポイントなどのソフトを起動する待ち時間が結構あるのではないか?
3時間の大部分が、メールを読んで返信を書いている時間ではないか?
Excelで何かをひたすらコピー&ペーストしている時間がないか?

書き出してみて初めて「この作業にこんなに時間をかけていたのか」と気づくことがある。
いつもなんとなくやっていた仕事が急にムダなものに見えてきたのではないか?
その仕事は本当に必要か?

まずは仕事を見える化して、じっくり検証する。
見えてきた違和感、ムダらしきもの、それが効率化をしていくためのヒントである。

なお、何でもかんでもITの活用を考えろということではない。
ムダが見つかった時に、ITだけでなく他の手段で簡単にできないか、その作業はそもそもなくしてしまって問題ないのではないかと、多角的に考えてみる。

時間を見える化してムダを探していく過程の中で、もう1つ意識しておいた方がよいことがある。
それは「自分の(時間の)コスト」
だ。



一般的なアルバイトでは、給料が「時給○○円」と定められている。
月給や年俸、あるいは仕事ごとに報酬が支払われる業態の人は意識が薄いかもしれないが、同じような考えを持っておくべきである。

月収40万円で月に8時間×5日×4週間=160時間働いているのであれば、40万円÷160時間=2500円/時がおおよその時給だ。
パソコンの起動時間やアプリケーションの立ち上げ時間で1時間ロスしたら、それは自分の1時間分のコストがその待ち時間に充てられたことになる。
1日1時間のロスでも、1カ月で何万円もの価値になる。
古いパソコンより新しいパソコンにしたほうがいいというのは、すぐご理解できるだろう。
不要な仕事に何時間もかける行為は何千円、何万円を捨てることに相当するのである。
今はスペックの高いパソコンでも十数万円で買える時代だ。
ストレスのないパソコンのほうが集中できるし、数カ月でペイできてしまうのだ。

また、「人数」も念頭に置いておく。
人数は一見、時間の話と直結しないように思うかもしれないが、10人でやっていた仕事を工夫して、同じ時間で5人でできるようにしたとすれば、半分の時間で仕事が済むようになったとも考えられる。

このように、自分たちが何にどれだけ時間を使っているか、その時間がそもそもどれだけの価値なのかをしっかり理解する。
この意識が抜けていては、効率化はできない。


◾️生産性を上げるために「時間」を買う

著者の顧問先の会社で、時間のムダ遣いについて次の2つの例があった。

・例1 各所からメールでもらったデータを手作業でコピーして使う
あるリーダーが、売上実績などをまとめて上層部へ報告するために、各所の担当者からデータを定期的にもらっていた。
よくある話だが、問題はそのデータのもらい方である。
各担当者からExcelファイルをメール添付で受け取り、それを自らのExcelに手作業でコピーして整理し、それを報告資料に使っていたのだ。
何十人もの担当者からメールで飛んでくるExcelは管理するのが大変です。
「添付し忘れ」「受領したあとで内容に間違いがあって再送されてくる」「ファイル名が各自バラバラ」など、管理面で頭の痛い状況があった。

・例2 複数人が共有サーバー上で作業
例1と似たような状況で、1つの共有Excelファイルを作成し、みんながアクセスできる共有サーバー内に保管し、そのファイルを更新するような作業形態を取っていた。
例1よりはマシだが、ある人が作業している人は他の人がそのファイルを同時に更新できないなど、不都合があった。

これらの企業で提案したことは、Googleのビジネス用グループウェア「G Suite(旧:Google Apps)」の導入だった。
G Suiteの「スプレッドシート」と呼ばれるアプリケーションは、Excelとほぼ同じ機能を持ちつつ、Web上で共同・同時編集が可能で、ファイル更新履歴を残すこともできる。



G Suiteは、会社で申請・加入し、会社が社員1人ひとりにメールアドレスを発行・管理することができる。
その他さまざまなグループウェア機能を総合的に利用できて、1人あたり月に約500円(現在は680円)。
ビジネス専用のグループウェアなので安定性も抜群。
24時間365日のサポート体制が充実しており、万一の際も迅速な復旧とデータ保護が行われるので安定性の面でも万全である。

ちなみに無料のGoogleアカウントでも同じスプレッドシートを使うことができるが、その場合は個々人でアカウント取得が必要(=会社がアカウント管理をできない)、かつ、万一の際のデータ保証などがG Suiteに比べて弱いなどのデメリットがある。

例1・例2の企業とも、このときのグループウェア導入によって大きく業務効率が改善した。
今までは何十人から報告をもらってまとめたり、せっかく共有していても同時作業できないという不都合があったりしたのが、共有しているスプレッドシートを手軽に使うだけに変わったのだ。

この例は、「チームで何か作業をしている仕事」に効率化ポイントを見出した例でだろう。
同じように売上報告をまとめる場合でも、1人でExcelファイルをつくって報告しているだけなら、G Suiteの環境を手に入れても変化はないから。

このように、効率化のきっかけとして、複数人で同じ仕事をしているときは、そこに効率化できる要素がないか考えるようにする。
みんなと情報共有をしながら案件を進めていく場合、必要な資料やデータはクラウド上で共有すべきである。
やり取りはチャットツッールを活用すると、堅苦しいメールが不要となってよりスピーディになるなどの効果がある。

ちなみに、月500円を人数分だけ捻出するのが安くはないと感じるか?
100人なら5万円、確かに小さくない出費かもしれない。
しかし、社員1人あたりの作業時間が月に1時間でも短縮できるのなら、それだけで500円は元を取っていることになる。
文字通り、「時間を買う」ことができるのだ。

逆にいえば、たかが500円でもそのグループウェアを全く使わなかったなら、文字通り「宝の持ち腐れ」であり、500円を人数分捨てることになる。
このようなツールはなんでもそうだが、導入=改善ではない。
組織で活用して初めて改善となるのである。


◾️おわりに

私自身、前の職場ではExcelばかり使っていたのに対し、今の職場ではG Suiteのスプレッドシートを使っていますが、とても効率化されています。
IT化による効率化の重要性を実感しています。
しかし、私の周りではまだまだIT化が進んでおらず、古いツールを未だに使っている会社が多いです。
そんな状況が日本の生産性の低さに現れているのかもしれませんね。
日本の生産性を上げるきっかけとして、参考にしていただきたい1冊です。
気になる方は是非読んでみてください。

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