『超ホワイト仕事術』読書レビュー 125冊目:ビジネスNo.84
『超ホワイト仕事術』
著:高野孝之
こんにちは、読書好きのmasamariです。
今回は、高野孝之さんの『超ホワイト仕事術』をご紹介します。
◾️「個人の尊重」を何よりも大切にする
マネジャーは、メンバーの個々の特性、よいところ、悪いところをきちんと把握・分析して、しっかりと受け止めることが重要である。
その上で、マネジャーとメンバーは、お互いに人間性を尊重し合うべきということだ。
これが「ホワイト」な仕事の基盤になる。
どんなに能力が高い人であろうと、低い人であろうと、その人の能力を今より引き上げる。
そこに好き嫌いの感情を持ち込まないようにすることが大切である。
ベースとしてまず個人を尊重しながらやっていく、ということが基軸になる。
著者がいたIBMには、3つの信条があった。
それは「最善の顧客サービス」「完全性の追求」そして「個人の尊重」。
会社全体として「個人の尊重」を理念として掲げているわけである。
そこには、家父長的で社員への支援を惜しまない組織風土があった。
ひとりの個人というものを尊重して仕事をしていこうとする。
マネジャーであろうとメンバーであろうと、基本的には「個人対個人」。
お互いの価値観も、生き方も、家族のあり方も、全部認めて受け入れるということ。
米国企業だから、さまざまな人種の社員がいる。
そして、アメリカの自由な社会の中では、みんなが平等であるという理念が原理原則としてある。
男性であろうと女性であろうと、ハンディキャップがあろうとなかろうと、それぞれの個人の尊重は何よりも優先されるのだ。
この考えに従って、日本IBMでも、お互いの名前を呼ぶ時は、基本的に呼び捨てにはしない。
上司であっても、社長であっても「○○さん」と呼び、役職では呼ばない。
真の意味での個人の尊重とは、こうした日頃の言動から育まれる風土でもある。
個人の尊重は会社の信条のひとつだから、個人の尊重に反することは会社の理念に反することになる。
そのため、マネジャーは決してしなかった。
しかしこれは、仕事をするにあたって、すべての会社において大事なことだ。
マネジャーの重要な役割のひとつに、経営者の考え、つまり理念や信念を正しく読み取り、それをメンバーに伝えていく、ということがある。
たとえば「個人の尊重」と聞けば、誰もが「なるほど、それは大切なことだ」と言うだろう。
しかし、では実際に何をすることが「個人の尊重」で、何をすると「個人の尊重をないがしろにすること」になるのか?
それは、マネジャーがメンバーを訓練し、磨きをかけて、メンバーが自分自身の手で成功をものにしようとするのを支援することだ。
そして、各個人がそれぞれの問題・願望・才能・不満・目標を持っていることを認めて、メンバーを啓蒙し、仕事の要求する内容が変わった時には再教育を施し、仕事に難しているときには別のチャンスを与えること。
これが出来なければ、個人の尊重とは言えない。
IBMの3つの信条が生まれたのには歴史がある。
創業者のトーマス・ワトソンは、1911年、40歳の時に、CTR社という秤(はかり)や統計器、時計などをつくっている会社に営業マンとして転職する。
そして同社を一から立て直して、3年後の1914年にInternational Business Machines=IBMという社をつくった。
会社の経営理念とは、創業者個人の価値観から生まれることが多いものである。
トーマス・ワトソンは家父長的なリーダーであり、社員を大切にして、社員同士も大切にすることが、会社の成長につながると信じていた。
そして誰もが組織の中で、立場を失わないよう、また誰一人としてマネジャーの不正な、個人的な気まぐれの犠牲にならないよう、心したいとの信念から「個人の尊重」の信条が生まれたのだ。
著者が日本IBMに入社した時は、すでにIBMはグローバルで社員数20万人を超える「世界の巨人」だったのだが、入社後の面接から、9カ月のトレーニング・研修期間中、そして営業に配属になってからも、常にこの3つの信条を叩き込まれた。
「迷ったら、原理原則に戻れ」というわけである。
「どんなに商品やサービスの形態が変わろうとも、唯一変わらないものがこの3つの信条である」と教え込まれたそうです。
信条が成立した背景を聞いたのもその時期である。
会社には必ず理念があるはず。
あるいは経営者の信念があるはず。
それをきちんと酌み取ることをまず望まれるのが、マネジャー以上の人間なのだ。
そして、それを教育としてメンバーに伝えていく。
それも抽象的にではなく、その時その時で仕事を通して具体的に伝えていく。
これはマネジャーの大切な仕事なのである。
◾️自ら率先して「休み」をとる
日本において、少なくとも、今のところ「ブラック」な会社とは、残業時間の多さと、休暇取得率の低さによっていわれることが多いだろう。
年間の有給休暇の取得日数に関して見てみると、欧米では平均30日なのに対して、日本は10日である。
有給消化率は年間有給休暇日数20日の50%、世界28カ国中で最下位だ。
日本ではこのように休暇取得率が低いのだが、それが会社経営に及ぼす影響を考えている人は意外と少ないと思われる。
国際会計基準では、未消化の有給休暇は企業の「負債」として扱われる。
つまり、有給休暇の取得率が低いということは、その分の人件費を会社が拠出していることになる。
財務的に、非常にマイナスだ。
したがって、マネジャーはメンバーに、積極的に有給休暇を取らせなければならない。
それが会社の利益につながるからである。
そしてそのためには、まずマネジャー自身が思い切った休暇を、率先してとることが必要だ。
マネジャーが休める職場では、メンバーも休みやすい。
著者のいた会社の場合、初年度の有給休暇は10日、次年度から20日。
繰り越していくと、最大では40日まで取得できる。
著者は、営業課長の2年間、営業部長の3年間を通して、毎年、夏休みを最高で4週間、いちばん少ない時でも2週間、継続してとった。
もちろん、急に休んだわけではない。
あらかじめ、長期で休むための計画を立てた。
著者が営業課長2年目の時、上半期で売上目標の60%を達成する。
そして達成したらメンバー全員が2週間の夏休みをとる。
そう宣言した。
これは、自分自身のコミットメント(約束)である。
逃げ場がなくなるように公言したのだ。
ポスターを作って、自分の席の横と、部長室の横と、本部長の席の横の3カ所に貼り出した。
タイトルは「ビッグ・サマー・バケーション」。
ポスターには、メンバー全員(著者とメンバー7名)に加えて当時の営業本部長と一緒に撮った写真を入れた。
きちんと実績を挙げた上で、正々堂々と休暇を取る。
何も悪いことはしていない。
だから、責任者である営業本部長も巻き込んで、オープンに「休暇をとる」と宣言したのである。
どうせやるのだから、公明正大に、なおかつイベントのようにやったわけだ。
もちろん、将来へのコミットメントだから、目標を達成できない可能性だってある。
その時は著者が赤っ恥をかくことになるが、それでもやったのだ。
ところが不思議なもので、こうすることで、メンバーみんながやる気になるのである。
単に「休暇を取ろう」と言うのではなく、「やることをやって、大手を振って休もう」と言った方が、モチベーションが上がるわけだ。
ポスターを作ったのは、営業課長時代の最初の1回きりだが、マネジャーが率先して休暇を取ろうとすると、メンバーが納得し、協力し、自分たちも堂々と休めるのだと実感した出来事だった。
長期の休暇をとることは、会社経営のためになるだけではなく、個人として、あるいは一市民として与えられた当然の権利。
それを実行するかしないかは、本人の意志次第なのだ。
「働き方改革」とコインの表と裏の関係にあるのが「休み方改革」。
ドイツ語で休暇を表す「Ferien(フェーリエン)」は複数形しかない。
まとまった休みをとることが休暇という意味だからだ。
リフレッシュするためには、休暇は最低でも2週間は必要である。
人によって違いがあるが、2、3日ではとてもリフレッシュできないのではないだろうか。
そこで著者は、2週間以上の夏休みをとったのだが、やってみてわかったこともある。
3週間も休むと、仕事がしたくなるのだ。
ついつい仕事のことを考えてしまう。
著者が4週間休んだ年の、最後の1週間はあまり休んだ気がしなかったそうです。
長期休暇の期間は、2〜3週間がベスト。
そうして、とことん仕事から離れてみて、自分を見つめ直す時間を持つ。
家族との時間を持つ。
あるいはヨーロッパでは当たり前のサマー・バケーションを経験してみるということは、その後の仕事・人生を考えると非常に有意義である。
長い休みをとることで、仕事に対する価値観も変わってくる。
新しいアイデアや、今までの自分のやり方のまずかったところ、様々なことが見えてくる。
「ホワイト」な職場にするためには、まずマネジャー自らが、しっかりとした計画のもとに長期休暇をきちんととる。
それは良いことずくめの行動なのである。
◾️おわりに
「ホワイト」な職場にするためには、まずは上の人から変わる・変えていくということでしょうか。
確かに休みたいと思っていても、上の方があまり休んでいないと、休むのが申し訳なくなって躊躇してしまいます。
自由に休みを取れないと、休み中も仕事のことが気になって休んだ気にならないですからね。
その他にも「ホワイト」な職場にするための方法が紹介されていますので、気になる方は読んでみてください。