『プロの課題設定力』読書レビュー 127冊目:ビジネスNo.86

『プロの課題設定力』
著:清水久美子


こんにちは、読書好きのmasamariです。

今回は、清水久美子さんの『プロの課題設定力』をご紹介します。


◾️課題設定力とは?

課題と問題の違いは何か?
本書で紹介されているのは、課題設定のスキルについてである。
このスキルを身につけることで、仕事のパフォーマンスと、人材としての市場評価を、ワンランクもツーランクも高めることができる。

ここでまず、本書の最重要キーワードでもある「課題」という言葉の定義を、ハッキリさせておく。
社会人になる以前から、それこそ小学生の頃から「クラスの課題」「学力向上の課題」など、日常的に耳にし、口にしている言葉だろう。
だから、「何を今更?」と感じても無理はない。

しかし、次のような質問を投げ掛けると、意外に返答に困る方も多い。

課題と問題の違いは何ですか?

もちろん、文脈や、その言葉が使われる状況によっても、微妙に意味やニュアンス、レベル感が変わってくる。
本書では、「課題」「問題」を、次のように定義することにします。


●課題・・・「現状」と「あるべき姿」のギャップを把握した上で、「現状」を「あるべき姿」にするために、なすべきこと。
●問題(点)・・・課題の達成(「現状」を「あるべき姿」にすること)を阻む要因。


ですので、本書でご紹介する課題設定とは、

「現状」と「あるべき姿」を正確に把握し、「現状」を「あるべき姿」になることを阻む優先順位の高い「問題」を見極め、「現状」を「あるべき姿」に近づける方法を考えること。

ということになる。



◾️誰にも課題設定力が求められる時代

かつては経営トップに求められていた能力
「『あるべき姿』と『現状』を把握して……、それって現場のやる仕事?」
「課題設定って、社長とか上司が、しっかりしてくれればいいんじゃないの?」

ついついそう思ってしまった人の気持ちも、よくわかる。
実際、一昔前までは、それが正解だったのだ。
かつて、ビジネスシーンにおける役割分担は単純かつ明確だった。
会社が利益を出すための目標設定をするのは経営層(社長や経営に参加する役員クラス)の役割。
設定された目標を達成するため、実行手段を模索して設定するのは管理層(課長などの中間管理職)の役割。
さらに決められた実行手段を駆使して、設定された目標を達成するために実際に動くのが現場層(社員など)の役割、と。

つまり経営層・管理層が予測した状況下で、現場層は設定された指示に従って行動すればよかったわけである。
このことは、現場層でやることは目標達成か、または問題解決で、課題設定は経営層もしくは管理層の役割だったと言い換えることもできる。
でも、それは過去の話。
今では、そうはいかなくなってきた。

ビジネスの現場にも必要となってきた課題設定力
現場にも課題設定力が求められるようになった理由はいくつかある。
まず1つは、「変化が予測可能な時代」から「変化が予測不能な時代」に変わったことが挙げられる。
「変化が予測可能な時代」とは、90年代までを想像する。

戦後日本は、欧米先進国に追いつけ追い越せの高度経済成長を遂げてきた。
この時代には、目の前には先進国というお手本があり、また市場も拡大し続けていたので、「やるべきこと」は明確だった。
そして、トップが決めたことを、現場層がなるべく早く、全力で実行することが、企業にとっても個人にとっても、最も利益を生んだのである。
「『現状』と『あるべき姿』は……」 と考えているより、命令に対してそれに応えるべく迅速に行動することが、理に適っていたのだ。
誤解を恐れずに言えば、「自分で考える」社員よりも「考える間があったら行動する」社員が求められたのである。

しかし90年代以降、日本も欧米と肩を並べられる先進国の仲間入りを果たすと、もはやどの国も、お手本として追従することができなくなった。
同時に、産業や市場も成熟し、右肩上がりの成長を突き進むことができなくなったのだ。
どうなるかわからない、「変化が予測不能な時代」の幕開けである。

「変化が予測不能な時代」は、現在も続いている。
この時代は、「どうすればいいか」を判断することが難しい。
それに、ビジネスや組織は巨大化し、複雑化し、さらにスピードが求められるようになってきているので、経営者がすべてを判断して、決定することが不可能になってきている。

だから、現場レベルにも、課題設定力が求められるようになってきたのだ。
たとえば、顧客との商談中に、先方の社内状況が変わったことを情報収集したとする。
競合もどうやら察知しているようだ。
予想外の案件につながるかもしれないが、上司からは「今の案件をフォローすること」としか指示を受けていない。
上司や経営層はこのようなビジネスフィールドで起きている事象をすべて把握して、正確に事細かな指示を出すことはできないのである。
仮にできたとしても、判断を仰いでいるうちに顧客の状況やニーズは変わってしまうだろう。
「そういう指示は受けていません」ではすまされず、「自ら『現状』と『あるべき姿』を考えて、打ち手を考えること」、つまり課題設定力が求められるのである。

社内のケースでも、同様のことが言える。
職場のモラルやモチベーションが下がっている場合、あるいは業務がうまく連携できていないという問題がある場合、現場層の方がやるべきことが見えているということもありうる。
そんなとき、「いや、社長や上司が何も言ってこないから」と見過ごしていいものか。
このように現代のビジネスシーンでは、現場層でも与えられた目標達成・問題解決をこなすだけでなく、自ら課題を設定をして仕事に取り組むことが求められているのである。



◾️おわりに

これからの時代、経営層や管理層だけでなく、現場の人たちにも課題設定力が求められる。
時代の変化に対応していくことが大切ということですね。
課題は仕事だけでなく、普段の生活にも出てくることなので、誰もが身につけておかなければいけないスキルかもしれません。
課題設定について学びたいという方は、是非読んでみてください。

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