『5Gでビジネスはどう変わるのか』読書レビュー 133冊目:ビジネスNo.92

『5Gでビジネスはどう変わるのか』
著:クロサカタツヤ

こんにちは、読書好きのmasamariです。

今回は、クロサカタツヤさんの『5Gでビジネスはどう変わるのか』をご紹介します。


◾️5Gの本質は超高速通信だけにあらず

5Gサービスが始まることで何が変わるのか?

5Gの技術的な特徴として「超高速、低遅延、多数同時接続」が挙げられる。
これは5Gの規格を標準化する際に定められたゴールで、いわば5Gを名乗るために必要な要件である。



超高速とは文字通り「高速通信の実現」です。
最大伝送速度は下り20Gbps、4G/LTEに比べて100倍上回る。
もちろんこれは理論値で、当面の実効速度はその10〜20%程度かもしれないが、それでも仮に2Gbpsと考えれば、現在のモバイル通信はおろか、光ファイバーでの固定ブロードバンドよりも高速に利用できるようになる。
そのため、モバイルと固定回線の境目がなくなり、これまでのモバイルでは考えられなかった新たなユースケースが生まれることも期待されています。

また、単なる高速化ではなく、上り(アップリンク : 端末からネットワークやサーバーへのデータ送信)が高速化されていることにも注目が集まっている。
SNSの普及に伴いユーザーは以前に比べて気軽に動画を扱うようになったが、動画投稿をはじめ、テレビ会議やVRを使ったコミュニケーションなどの拡大が期待されている。

次に、二つ目の特徴である低遅延とは、「夕イムラグが小さい通信」のこと。
電気通信は、必ず遅延が生じる。
遅延の原因は、電波、光ファイバー、銅線といった通信を媒介する物質の特性によるもの、信号処理の効率性によるもの、通信事業者の基地局や中継器、光ファイバーの配線など通信機器の能力や構成によるもの、さらには一つの回線を複数端末で共用することによって生じるものなど、様々である。

5Gは、端末ー基地局間(無線区間)と、基地局間を結ぶコアネットワーク(有線区間)の両方で、タイムラグが小さくなるように開発された。
同じ基地局につながる端末が直接通信する場合は1ミリ秒以下、コアネットワークを介する場合でも10ミリ秒程度の遅延までとするように工夫されている。
これは4G/LTEの10分の1程度という高い能力である。

三つ目の特徴である多数同時接続は、あるエリアの中でできるだけたくさんの端末を収容できるようにする、ということ。
5Gでは、1通あたり100万台のノード(端末やセンサー)を収容できることが要件として定められている。
4G/LTEでは10万台だから、10倍の能力が要求されているということである。

地球上の陸地の面積が約1.5億Mなので、単純計算すると1500兆台のノードを収容できることになる。
一方で地球上の総人口は現在万億人程度ですから、割り算すると一人あたり2000台のノードを利用できるということだ。

実際にはこれほどスマートフォンを使わないので、多数同時接続はIoT(モノのインターネット)機器の利用を促すことになるだろう。
単純計算なのであくまで概念的な想定だが、一人あたり2000個のセンサーが、私たち一人ひとりの健康や生活情報を追いかけるようになる。
5G時代は人間がセンサーネットワークに包み込まれるようになり、スマートフォンのユーザー体験をはるかに超えた多様で濃密なデジタル・トランスフォーメーションが進むという未来が想像できる。

また、ネットワーク・スライシングは、ソフトウェア技術によりネットワークを仮想化し、用途に応じて柔軟に使い分けるための技術である。
従来は単一の目的を果たすための「塊」だったネットワークを、あたかもチーズやハムのように、様々な用途に応じてスライスしていく。
かつては、通信機器というハードウェアが、ある単一の目的(例えばデジタル通信サービスの提供)を規定し、運用上の要件も画一的に設定されていた。
しかし本来であれば、同じ通信サービスであっても、緊急時の利用を優先させたり、より高い料金を払ってくれた人に高速かつ安定したサービスを提供したりするという付加価値があってもいいはずだ。

5Gのネットワーク・スライシングを用いれば、あたかもクラウドコンピューティングと同じように、ネットワークの運用をより柔軟かつ多様に実現できる。
とにかく安く使いたい、安心・安全に使いたい、一瞬だけ高速に使いたい…こうしたユーザーの個別ニーズに応えることが期待されている。


◾️5G市場の本命は「非スマートフォン」

富士キメラ総研が2018年5月に発表した予測によると、世界の5G市場は2019年から顕在化し、2023年には基地局(通信事業者の設備)の市場規模が4兆1800億円、ユーザーが利用する端末などのデバイス市場が26兆1400億円と見込まれています。
合計すると、2023年で約30兆円を超える市場に成長するということである。



日本の市場はどうか。
調査会社IDC Japanの予測によれば、2023年には5G対応携帯電話のシェアが市場全体の28.2%を占め、5Gモバイル通信サービスの契約数は3316万回線になると見込んでいる。



筆者が気になるのは、5G携帯電話の出荷台数とシェアだ。
予測によれば、2023年に「出荷される携帯電話」のうち、30%弱が5G対応端末だということになる。
出荷総数が3000万台程度と見込まれているので、そのうち900万台程度ということだ。
本格出荷が始まる2021年は500万台程度、2022年で900万台、2023年も同水準の900万台程度が見込まれる。

この予測で対象としているのは携帯電話事業者の端末であり、スマートフォンが中心になるはずだから、買い替え
サイクルは現在と同じ3~4年程度が想定される。
すなわち、2023年時点で市場全体の累積数として、2300万台程度が5G対応スマートフォンということになります。

スマートフォンの普及は現時点でも飽和状態に近付いており、2023年時点で全人口の8割程度がすでに保有していると考えれば、日本中で1億台程度のスマートフォンが使われているということになるので、5Gは大体4分の1程度の普及状況と考えることができる。

しかし、図1-5の「5G通信サービスのシェアが13%程度」という数字と一致しない。
5G端末は持っていても5Gサービスを利用していない(契約していない人)が一定程度存在する、ということになる。
もちろん予測値なので、実際は2023年を迎えてみないと正解が分からないが、通信事業者が4Gの延長線上で提供する5G通信サービスについては、やや厳しめの見方とも言える。

これらの数字も、「まだまだこれから」なのか「小さい」のか、見方が分かれるところである。
筆者の周囲にいる通信業界の関係者でも、「控えめな数字」だとか「通信事業者の設備投資計画を考えればこれくらいではないか」と、いろいろ意見が分かれている。
あくまで筆者の直感だが、スマートフォンを含めた現状のモバイル利用の延長という観点で5Gの普及を考えるなら、「これくらいが妥当」となる。

スマートフォンは4G環境で十分に満足でき、現在のスマートフォンやアプリのパラダイムに愛着があるユーザーは、むしろ積極的に4Gを選択し続けるはず。
となれば、2020年から少なくとも10年間は続く5G時代において、サービスの「本丸」はスマートフォンでの利用ではない。
図1-6は、通信分野で世界的な市場調査を行っているオーバム(ovum)社が、2017~2022年にかけて、5G関連でどのサービスが成長するかを予測したもの。



円の大きさは2018年時点の市場規模を表しているが、大事なのはそれぞれの産業の成長を表した縦軸(金額)と横軸(成長率)である。
上にある円ほど金額ベースでの絶対的な成長が大きく、にある円ほど成長率が大きい、ということを意味する。
結果として、「右上」にあるものほど、将来有望だということ。
図を見ると、同社は特にゲームと動画配信が急成長すると予測している。
また、既存の携帯電話産業(左上)よりも、右下にある固定ブロードバンドの成長率を高く見積もっている。

この予測は、筆者の直感とも一致する。
なぜなら、すでにモバイル通信事業者は、5G用の事業開発として、ゲームと動画配信に着手しているからである。
少なくとも5Gの普及初期にあたる2022年ごろまでは、半ば「約束された未来」だと言える。

ここで重要なのは、ゲームも動画配信も、必ずしもスマートフォンを前提としていない、ということ。
むしろ自宅での大画面環境を意識したサービス開発の動きが水面下で進み始めている。
この動きこそ、ゲームや動画配信の普及が一巡した後の、5G普及の本番に向けた大きな橋頭塁となります。


◾️おわりに

5Gになることで、通信速度が速くなるだけと思っていましたが、それだけではないんですね。
30兆円を超える市場になるというのも驚きです。
特に急成長すると言われているのがゲームや動画配信事業ということで、私自身ゲームが好きなのでどんな風に変わるのか楽しみです。
5Gがどんな影響を及ぼすのかを知りたいという方は、是非読んでみてください。

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