『5日間で「自分の考え」をつくる本』レビュー 74冊目:自己啓発No.16
『5日間で「自分の考え」をつくる本』
著:齋藤孝
こんにちは、masamariです。
今回は、齋藤孝さんの『5日間で「自分の考え」をつくる本』をご紹介します。
◾️「どう違うか」を考えよう
数学の問題にいくつかの解法があるように、思考にはいくつかのパターンがある。
普段、私たちが「この人は頭がいいな」とか「よく考えているな」と感じる人は、実は密かにこのパターンを駆使しているのである。
ならば、私たちもそれを身につけて"武器"にすればいい。
最初は、「比較する」。
例えば一枚の絵について感想を求められれば、「いい」「悪い」とか「好き」「嫌い」ぐらいの言葉しか出ないかもしれない。
場合によっては「よくわからない」とか「別に」と答えてしまう人もいるかもしれない。
しかし、そこにもう一枚別の絵があり、「見比べてどう思いますか」「どちらがいいですか」などと尋ねられれば、様々な表現が可能になるはずである。
あるいは歴史を振り返ってみると、近代日本をAとした場合、比較対象となるBは常に西洋だった。
福澤諭吉の『学問のすゝめ』を貫くのも、ほぼこの構図である。
従来の漢学者による抽象的な議論には意味がないとし、それに対して西洋は具体的かつ合理的な科学が発達していると説いた。
だから日本も西洋文明を取り入れ、科学や実学を学ぶ必要がある、というわけである。
ここまで大仰なテーマを考えるかどうかはともかく、日常的にもこれは使える。
ある対象に接したら、「必ず比較して考える」という思考習慣をつけてしまうことだ。
その差異に着目することで、対象の特徴を捉えることができる。
これが、考えが停滞しないためのもっとも基本的な方法である。
少なくとも、「わからない」「別に」という答えにはならない。
そればかりか、文章を書いたり、企画を出したりする際にも有効だ。
しばしば本人の思い込みだけで書いたものを見かけるが、それがボツになることは火を見るより明らかである。
もう少し冷静に、何を伝えたいのか、どこに特徴があるのかを書き込む必要がある。
その際、比較対象としてBを用意すれば説得力を持つはず。
単純にAを推すより、思考に奥行きがあるように見えるのである。
例えば、世間一般でいわれている通説や既存の商品などがBに該当するだろう。
いわば主張したい主役Aを輝かせるための脇役として、Bを持ち出すわけである。
◾️アウトプットを前提にすれば、観察にも力が入る
現象学的な思考を身につける有効な方法は、見聞きしたものをアウトプットしてみることである。
小説家や芸術家の仕事とは、まさにこれだろう。
私たちもふだん、多くのものをよく観察している気でいる。
ひとたび旅行にでも行けば、より見聞を広めようともする。
だが、その時点で何らかの先入観を持っていたとしたら、せっかく新しいものを見ても観察眼は鈍ってしまう。
いかに "素"の状態で丁寧に見聞きできるかによって、インプットの質も、したがってアウトプットの質も違ってくるのである。
そしてもう一つ注意すべき点は、頭の中に「おもしろかった」という印象として止めておくだけでは、やがて風化して忘れてしまうということだ。
後に新しい情報を脳にインプットすると、あっさり上書きされてしまうおそれもある。
それを防ぐには、アウトプットが一番である。
小説とまではいかなくても、ブログやSNSのネタにするとか、機会を見つけて人に話すことを前提にすれば、より真剣に観察しようと思うだろう。
それに、記憶にも定着しやすくなるはずである。
ついでにいえば、かの手塚治虫は子ども時代からよく昆虫をスケッチしていたという。
その絵は今日も残っているが、同じ種類の虫を描いていても、表情は一匹ずつすべて違う。
いかに観察に没頭していたかが窺える。
たしかに、自然界の虫はすべて個体差があるはずだ。
それを一つ一つ描いていけば、すべて違う絵になるのは当然である。
しかし私たちの多くは、まずハエはハエ、蚊は蚊としか認識しない。
人によっては、それもまとめて「虫」としか見ないこともある。
個体差に気づくこともないし、興味もない。
このあたりが、手塚治虫と私たちとを決定的に分けているのかもしれない。
ならば、私たちも手塚を見習い、絵を描いてみてはどうか。
人に見せることが目的ではないので、うまく描く必要はない。
その代わり、子ども時代を思い出して対象をよく観察し、写生すること。
趣味でもなければ絵を描くことなど滅多にないだろうが、これがけっこう楽しい。
子どもが夢中になる理由が、あらためてよくわかるはずである。
それに集中カも求められるし、観察眼も養われる。
アウトプットの方法としても秀逸だ。
メモの裏にでもササッと描けば、いい気分転換になるかもしれない。
◾️おわりに
本書は、5日間で「自分の考え」がつくれるように、読書術や思考術などのテクニックが説明されています。
図なども交えて説明されているので、わかりやすいかと思います。
気になる方は読んでみてください。