『ダークサイド・スキル』レビュー 95冊目:ビジネスNo.62

『ダークサイド・スキル』
著:木村尚敬


こんにちは、masamariです。

今回は、木村尚敬さんの『ダークサイド・スキル』をご紹介します。


◾️ブライトサイドとダークサイド

日本の大企業の出世パターンを見ると、従来のいわゆるエリートコースは、主力部門や北米市場などを経験させて、経歴にできるだけ傷をつけずにピカピカに育てていくことが王道だった。
しかし、安全地帯でぬくぬくと育ち、減点されない人がトップとしてふさわしい時代は終わった。
「改革」志向のトップを育てるには、「良い子」でいるだけではダメで、むしろミドルのうちにどれだけ清濁併せ呑む判断の回数を積み重ねてきたか、面と向かって反対派に立つ人、静かに抵抗してくる人たちを、自己の持つ組織上の権力だけに頼らずにどれだけ巻き込み組織を動かしてきたか、こうした厳しい経験を積んできたかが問われるようになったのである。

そこで、将来のトップ候補であるミドルリーダーに向けて、日の当たる「ブライトサイド」だけでなく、普段はスポットが当たらないが、改革を最後までやり遂げるために欠かせない「ダークサイド」のスキルをまとめたのが、本書である。

ここで「ブライトサイド」のスキルというのは、論理的思考力だったり、財務や会計の知識だったり、営業・マーケティング系のスキルだったり、いわゆるMBAで基礎科目として学ぶようなスキルを指すが、それだけでは通用しない。
こうした基礎スキルだけで組織が動かないのは、他でもないMBAホルダーのみなさんが実感していることである。

経歴がピカピカの良い子ちゃんでいるだけでは、時に痛みを伴う「改革」を決めて実行していくことはできない。
古いものをやめて新しいものに変えようというときに、ひずみが出たり、反対運動が起きたり、わだかまりが生じたりするのは当たり前で、そうしたものを乗り越えて人を動かす能力や、組織に対する影響力、空気を支配するカが求められる。
切った張ったをやるためには、もっと泥臭いスキルが必要なのである。

そうした能力は、頭の回転が速い、数字に強い、説明能力が高いといった、一見してわかりやすく、目立つ能力と比べると日陰の存在とでもいうべき能力で、だからこそ「ダークサイド・スキル」と呼ぶのである。

ブライトサイドとダークサイドを別の言葉に置き換えると、「太陽」に対する「月」であり、「光」に対する「闇」であり、「表」に対する「裏」であり、「平時」に対する「有事」である。
どちらが欠けても、真のリーダーにはなれない。
社内のエリートと呼ばれる人たちの中には、表向きのブライトサイドの能力は際立って高いが、人心掌握力に欠けたり、社内の情報戦に弱かったりして、打たれ弱い人がけっこういる。
それでは改革をやり遂げることはできないのだ。


◾️KYな部下を育てる

現場を預かるミドルが、自部門にどれだけ多様性を持たせられるか。
著者は多様性とは、何も外国人や女性の活用ばかりを指すのではなく、組織の中の大多数を占める新卒入社のプロパー社員の中に、どれだけ堂々と他とは違った意見を言う人間がいるか、そしてこうしたKYな人間をどれだけ許容できるかということだと考えている。

同質化した組織では、空気を読まず、時には反対意見を堂々と述べる人間ほど、組織の(悪い意味での)自浄作用が働いて排除されがちだし、なにより、そういう部下を持ったミドル本人の負担が大きくなる。
それでも、そういうKYな発言をどれだけ拾えるか、どれだけ許容できるかという器の大きさが求められているのである。

逆にいうと、組織である以上、どうしても同質化の圧カがかかり続けるから、自分に対してお伺いを立ててくる部下を持ち上げるのではなく、むしろ積極的に「バツ」をつけていく。
KYな人間を優先するには、それくらいの準備が必要なのだ。

そのために重要なのは、上司が自分で答えを言わないこと
上司としても忙しいので、何か聞かれたときに一番楽なのは、答えを言うこと、指示を出すことであるのは間違いないが、先に答えを言ってしまうと、部下はそこにすり寄ってきてしまう。
上司の発言によって下の人間はどうしてもバイアスがかかるから、バイアスをかけずに思ったことを言わせるためには、「〇〇さんはどう思う?」と粘り強く問い続けることである。
自分のほうが職務経験が長いし、答えはわかっているかもしれないが、面倒くさくても「これをやっておけ」と言うのをグッとこらえて、部下に言わせる。
そこを我慢できるかどうかで、KYな人間が育ち、上司の顔色をうかがわずに、自由にいろいろな意見を言える文化ができるのである。


◾️おわりに

私自身が磨いているのは「ブライトサイド・スキル」に当てはまる。
上を目指そうとしたり、世間で上手くやっていこうとするのであれば、本書で紹介されている「ダークサイド・スキル」を磨かなければいけませんね。
今後は本書を参考にして、ダークサイド・スキルを身につけていきます。

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