『あたりまえを疑え。』読書レビュー 115冊目:ビジネスNo.78

『あたりまえを疑え。』
著:澤円


こんにちは、読書好きのmasamariです。

今回は、澤円さんの『あたりまえを疑え。』をご紹介します。


◾️公平であることが生産性を下げている

「なぜ全社員が同じ時間に出社する必要があるのでしょうか?」

こんなことを言うと、「現場はもう動いているのだ!」と言い返されるのがオチだ。
朝8時半や9時に出社時間を定めている多くの会社は、工場や店舗や工事現場を基準にして出社しているということなのだ。
「現場でトラブルがあったときに連絡がつかなければ問題になる」とは、もっともらしい理由かもしれない。
でも、これだけスマートフォンが普及した時代に、くるかどうかもわからない連絡をオフィスで待ち受ける必要があるのか?
という疑問も湧いてくる。

「会社に重要な書類が置いてあるんだ!」
たしかにそうかもしれないが、そんなことではその会社は交通機関が止まった瞬間に、すべての機能が停止することになってしまう。
つまり、BCP(事業継続計画)がむちゃくちゃなわけである。
むしろ、どこからでも情報にアクセスできるようにするなどして、いかなるときも業務が止まらないようにすることのほうがよほど重要だ。

業務の効率だけを考えれば、全社員が同じ時刻に出社する必然性はない。
なのに、なぜみんなが朝9時にいかなくてはならないのか?
結局のところ、こんな理由だったりする。

「不公平になる」

「現場は早く出ているのだから、本社や本部もそうするべきだ」という考え方だ。
現場では時間で区切ってタスクをまわさなければならない面もあるので、みんなが同じ出社時間である必然性はあるかもしれない。
しかし、本社や本部の社員にはなんの関係もなければ、必然性もない。
ましてや朝9時に出社しようとすると、電車も道路も混んでいるし、エレベーターは長蛇の列。
これでは、社員の生産性はまったく上がらない。
であれば、朝7時に出社して、5時に仕事を終わらせて帰るほうがよほどいいだろう。

もちろん、昼ごろに出社して夜に終わるということだってありだ。
そうした考え方ができない会社がなぜ多いかというと、心のどこかに「現場は早くから動いていて悪いから、それに合わせよう」という日本人特有の気質があるからではないかと感じてしまう。


◾️「自分を変える」にはアウトプットが近道

「外のものさし」を持つには、アウトプットする場を外に持つことが大切。
外の世界で自分がどんな評価を受けるのか、一度晒される状態を意図的につくるわけである。
言い換えれば、アウトプットしなければならない状況を自分でつくるということ。
いつもと同じ生活のままで「アウトプットしなきゃなあ……」と思っていても、いつまでもアウトプットなんてできない。
もし、今アウトプットを迫られる状況にないのなら、自分でその機会をつくればいい。
これが、「自分を変える」ということ。

当然、そこでは自分が勤務する会社の名刺なんてまったく通用しない。
だからこそ、「自分自身がユニークな立場でないと絶対にリスペクトされない」ということが肌感覚でわかるのだ。
つまり、自分に「タグ」がついていないと厳しいということ。

たとえば、「あ、プレゼンが得意な●●さんですね」と、会社名ではなく「〜が得意な人」と言われなければばならないわけである。

著者は常に得意なことについては「打率10割」を目指している。
本当に自分の軸にしたいなら、そのくらいの意識を持ちたいもの。
もちろんミスや失敗は起こるものだが、あくまで目指すのは10割。
油断してはダメなのだ。

あのイチローですら、「打率が高い人でも10回のうち7回は失敗する」と言っている。

「自分の記録を塗り替えるには10割以上の力が必要」

稀代の天才打者ですら、このように考えて日々の鍛錬を積み重ねているのである。


◾️成果を生み出す 「自動化システム」

著者がマネジメントしている部署は、「プレゼンやセミナーなどのセッションを通じて商談に貢献する」という場だ。
まず、著者たちにセッションを頼みたい人たちが予約をすると、データが自動でつくられる。
つまり、データ入力のためだけの作業はなく、予約がそのままデー夕生成になるわけだ。
そして、そのデータは「誰がどのような予算規模の、なにについての商談のお手伝いをして、なにを買っていただこうと提案しているか」といったデータに紐づけられていく。

また著者は、チームのメンバーに月報や日報などの報告業務を一切課していない。
すべての情報がダッシュボードに自動的に出てくるようにして、それを見るだけで、誰がどのくらいがんばってどんな結果を出したかが一目瞭然になるようにしている。
ビジネスである以上、ただ頑張るだけではなく、チームは結果を出さなければならない。
そのためには、すべての結果を数値化する必要がある。
これは失敗の可視化にも通じますが、もしメンバーが頑張ったのであれば、そのことも数値化され、マネージャーがひと目で評価できるようにしておかなければならない。

このように、ITをフル活用して、できる限り手作業を減らして自動化することが結果につながる働き方だと著者は考えている。
もちろんせっかく自動化しても、仕事に無駄な時間をかけていては本末転倒。
マネージャーの人は、
「長時間働いた」ということは、「効率が悪かった」
ということを理解しておいた方がよい。

長い時間働いて結果があまり変わらなかったら、明らかに効率が悪い。
それであれば、低い評価をしなければならない。
「あのチームは残業して必死でがんばったから……」などとプラスの評価は絶対にしてはいけない。
それならば、なぜ長い時間がかかったのかを紐解いて無駄なタスクを外していく。
また、長い時間がかかるということは得意ではない可能性が高いので、得意な仕事にコンバートすることを考えるべきではないか。
他に輝ける場所があるかもしれないのだから、コンバートを一考するのもマネージャーのような立場の人の大切なミッションである。

自動化、IT化というと、「なんだか味気ないよね」と感じる人もいる。
でも、著者に言わせれば、過去のデータに「味気がある」から問題が起きるのである。

いまだ多くの会社では、過去のデータに手が入れられるようになっている。
だから、二重帳簿粉飾決算をやってしまうことになる。
著者が所属する企業では、過去のデータに誰も手を加えられない状態にすることを徹底している。
いずれにせよ、成果が出ないときに労働時間を増やしたり、「根性」を入れ直したりしてもまったく意味がない。
まずは成果に至るプロセスを数字に変えて、徹底的に無駄な要素を省いていく。
そうすることで結果は歴然と変わっていくだろう。


◾️おわりに

当たり前と思っていることは、実は無意味だったりすることがある。
本書はそう思わされることがたくさんあります。
出社時間についても、当たり前のように決まった時間に出勤しているが、時間をずらした方が効率的になったりもします。
「長時間働いた=頑張った」と思えるかもしれないが、より少ない時間で実行した方が効率が良い。
日常の当たり前と思っていることを見直していかなければいけないと思わされた本でした。
日々同じようなことをしていてつまらないという方は、本書を読んで新しい考え方を取り入れてみてはいかがでしょうか。

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